■□野生
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 「豊かに広がる北海道の風景、その豊かさの影にひそむ一抹の寂しさが人々を北へ惹きつける。原始の姿を思わせる日高の山々、ラベンダー薫る草原、流氷の海辺、時計台の文字盤、ロシア教会の尖塔、そこに陽の沈む時、はるか北辰が輝きはじめる頃、旅人は悲しいまでの美しさに息をひそめる。



 知り合いにこのロケーションにピッタリの男がいる。夢は朝里の海辺に小屋を立て、潮騒と悠久の太古を語るつもりらしい。人々に心のオアシスをもたらすような仕事がしたいと言っていた。深遠なる思想家でもある。ほろ苦いやせ我慢に男の美学をみるのである。かぎりなく優しく、美しいご婦人も似合いだ、なかなか出会えない男の一人である。」
 




 郵便局から切手の原画の依頼がきた。テーマはエゾシカ、季節的に近くに鹿がいなく洞爺湖の鹿牧場に行って見た。エサがいいのか少し太っている。野性味に欠けるが威風堂々としたエゾシカを書くことができた。後に人気が全国一位と聞いて安心したのを覚えている。




 子供の頃余市の川の上流でよくアユをとって食べた。アユはスマートな魚だと思っていたが養殖のアユは太って何とも味気がない。香りも苦味もなかった。やはり野生はいい。北の大地のただ空高き中で、燃えるような情熱の絵を一心不乱に描いていた彷徨の日々が懐かしい。



 今、社会そのものが、今までのような単なる量的な豊かさを思考することから、人間的な美しさを志す社会へ、即ち、豊かな社会から人間的な美しき社会へ転換する機会ではないだろうか。



 我が青春も今静かにセピア色に変わりつつある。未来という時間の一時にあって、深く自分自身を見つめ、束の間の残像として常に思い出させてくれる。そんな絵を描きたいと思っている。



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